【big maple 21】山口百恵とイエローナイフ 滞在3日目
さてイエローナイフも三日目。
最終夜だ。
一日目
二日目
雑感
今日の日記の前に。
読みたくない人は飛ばしてください。
いつからオーロラが見たいという夢を持ったかは覚えていない。だが1つとても印象的だった番組があって、そこからオーロラをいつか見に行きたいと意識しだした気がする。
もう7年前の放送になる。
田中美保が出演した弾丸トラベラー。イエローナイフへ1泊3日でオーロラ鑑賞しに行く内容。この番組好きだったな、中川翔子、南海キャンディーズしずちゃんと梨花。ナレーションはキャイーンの天野くん。いい番組だった。
当時高校生だった私は田中美保が大好きだった。丸顔ショートの女の子が好きになったのは田中美保かいちご100%の西野つかさがきっかけなのは間違いない。あるいは両方。
結局この番組では田中美保はオーロラを見ることは出来なかったのだけど。1泊だけじゃなかなか厳しい。グーグル先生に訪ねても流石に動画は見つからなかったが、上記のファンが書いた記事にはイエローナイフのオーロラワールドにて鑑賞とある。
私はオーロラビレッジというポイントで鑑賞している。もちろんここイエローナイフではどこでもオーロラが見れる可能性があるし、車をレンタルしてアイスロードの方へ行ってみたと昨日引用したブログには書いてあった。それもなかなかハードだと思う。
オーロラビレッジを利用するのは日本人が最も多く、中国人(台湾?)と韓国人が同じくらいの比率で見かけられる。オーロラを見に来るのは日本人が多いがもちろん欧米圏の人も見かける。それでも日中韓がひと際目立つのは欧米の人だと働いている地元の人と区別がつかないから。
同時にこの地で働いている日本人も多く見かける。酔狂なことだ。
ツアーガイドだけではなくカフェや土産屋、そういえばこのホテルのフロントにも複数の日本人がいた。みんな若いしわざわざ働きに来てるんだろうな。おかげで旅行者は気軽に来れる。旅行会社の支店もあるしなんでも聞ける。
なんでこんなに日本人の姿が目立つのか。欧米人旅行者がなぜ少ないのか。似たような事例としてボリビアのウユニ塩湖が当てはまると思う。行ったことはないけれど。
私は国内のメディアの影響力の強さが原因ではないかという仮説を立てた。北から南までほぼ同じテレビ番組を見れる日本、旅行ガイドと言えばまっぷる、るるぶ、地球の歩き方な日本。そこまで国民に愛されている雑誌ブランドって海外諸国にはなかなかないのでは?旅番組についても同じだけど。
アメリカ50州は日本の47都道府県とは違いそれぞれが独立した国みたいなものだ。カナダも連邦国家(厳密にはイギリス連邦加盟国)だし'state of mind'がどんなものかなんとなく把握してきたつもり。
国家全域を把握するネットワークがそもそも稀有だしニュース番組だって新聞だって違う。ケーブルテレビは多種多様で人々の趣味によって選ばれるチャンネルは異なる。
そこまでオーロラの映像とか写真とかメディアに露出していないんじゃないかな?
あくまで仮説の域をでないけど。
「音」について書くのを忘れていた。
氷点下30度で雪を踏むと発泡スチロールを擦ったような音がするのにとても驚いた。踏む場所によっては楽器さながらの高音が出る。道端に転がっている氷は蹴飛ばすと「キン」と鳴る。備長炭を叩くとガラスを叩いた音がするけど感覚としてはアレに近い。見た目から想像した音と全く違う。
起床
昨日よりさらに遅い目覚め。シャワーを浴びても足の先まで冷え切ってしまった。暖まるまでなかなか寝付けず足をこすりあわせながら睡魔が訪れるのを待って眠った。
起きると今日も快晴。天気には恵まれた旅行になった。
今日も元気にマイナス25度。
マイナス30度もマイナス25度もさほど変わらない。プラス10度と15度だったらシャツを一枚脱ぐなり上着を羽織るなりするけどマイナス10度以下は全部同じ理論。色々と頭が悪い。
極北の寒さの中で電化製品がいかに頼りにならないか。そりゃそうだ。
iPhoneは手に持って1分もすると「高音注意」のアラートのあとに電源が落ちる。GoProのバッテリーもあっという間に切れる。車だってエンジンがかからなくなる前提でボンネットからプラグがプラプラ垂れている。駐車場には壁にコンセントが用意してある。この街では薪ストーブや暖炉が必須だ。パイロットモニュメントから眺めたら家々からモクモクと白煙が立ち上っている。もちろんホテルはセントラルヒーティングだけども。
暖房切れたら死ぬ。恐ろしい。
JAVAROMA COFFEE
最早昼食にしても遅い時間だった。ラテとブラウニーを頼む。たったそれだけでハイソな人間になった気分がするあたりがカフェ文化初心者のダサさ。
居心地のいいカフェだった。ここでも日本の女の人が働いていた。イキイキとしているのが信じられない。寒くないのかな。寒いでしょ。
ブラウニーの上にのっているマシュマロが柔らかくて気に入ったのでこのスタイルを定番にしてもらえないだろうか。お願いだスターバックス。
Prince of Wales Northern Heritage Centre
カフェから博物館へ。
なんてことはない博物館だけど見る人によっては価値を見い出せるだろう。先住民の文化やレキシ、芸術や鉱山に関する事柄が展示されている。キラキラ武士。
teepeeじゃなくてTiPiでしたすいません。
ここNWT(ノースウエスト準州)は元々鉱山で栄えたらしい。オーロラ観光だけじゃなかったのか。確かに街中を見回すとdiamondやらmineといった鉱山関連の単語が見受けられる。
どちらかというとコンテンツよりもこの博物館の名前の方が興味深い。
Prince of CanadaではなくPrince of Walesだ。
1979年のチャールズ皇太子公式訪問の際にこの博物館は開館したとのこと。
カナダに来るまでカナダがイギリス連邦加盟国だとは知らなかった。
政体は立憲君主制である。公式にはイギリス国王が国家元首(但しカナダではあくまでカナダ国王の扱い)となる[18]。形式的にはカナダ総督がカナダ国王の代理を務め、また実質的な首長は、総選挙により選出される連邦政府の首相である。
カナダ国王(イギリス女王)
→カナダ総督
→カナダ連邦政府首長(総督代理)
ためになったねぇ〜ためになったよ〜
中にはまっさらな湖を眺めながらコーヒーを楽しめるカフェもあった。カフェに寄ったばかりだったので利用しなかったが。
博物館の近辺に議事堂があると書いてあったので探してみたが見つからず。代わりに辿りついたのは市役所だった。
まあいい。議事堂を見学しても腹は膨れない。
黄色のナイフだ!
YKセンターと雑貨屋などをプラプラ見て回りつつ一旦ホテルへ。iPhoneが低温にやられていたためだ。自分自身もあたためつつ次の目的地へと向かう準備を整えた。
夕暮れの街
再びオールドタウンのパイロットモニュメントへ。
美しい街並みをなんとか日が落ちる前にカメラに収めることができた。
写真で見ると少し暗い。
これが撮りたかった。
夕陽が赤く燃えていた。
評判のレストランBullock's Bistro
ブルックス ビストロ [イエローナイフ]のグルメ・レストラン 徹底ガイド - フォートラベル
パイロットモニュメントそばのブルックスへ。
外観は立派とは言えない小屋だった。だが中は小奇麗で良い雰囲気。
カナダに来て一番美味しい料理だった。一皿25$〜なので少し高め。
ねるねるねるねの魔女みたいな鼻の高いおばちゃんがシェフ。目の前でホワイトフィッシュや極北イワナやバッファローリブを焼いている。なんとも言えない良い香りがして食欲をかきたてる。
いつもすべての食材が入荷しているとは限らないようで、「今日はこれ以外は全部あるわよ。バッファローリブもね」といった感じでもう一人優しい目付きをしたおばちゃんが案内してくれた。クレアおばさんみたいな。
ところで韓国人の観光客も食事をしていたんだけど彼らは缶ジュースにストローを差して飲むんだよね。男性も女性も。初めて目撃したのはトロントの語学学校で仲良くなったみんなと焼肉を食べに行ったときだった。はず。
みんな次々に「ストローある?」っておばちゃんに聴くものだから驚いた。面白いな。
ステッカーの貼り方が最早ストリート。
最初に焼き立てのパンを出してくれた。バターたっぷり。
でもパンというよりはスコーンの親戚のような食感。ずっしりとしているがやわらかい。
バターと小麦で作られた食物にバターを塗って食べるという禁忌を犯しながらメインを待つ。罪深い文化だパン食は・・・。やめられない止まらない。
これだ。
ホワイトフィッシュのパンフライ。
サラダとフレンチフライ付きで27$ほどだった。
これまたたっぷりのバターをフライパンに溶かし、同時に開きを3枚ずつ焼いていた。こういうのが食べたかった。タイプワイルド。
ホワイトフィッシュ。ここNWTでは先住民たちが好んで食べてきたサカナらしい。身はタンパクだけど味があって食べやすい。塩加減もいいしアツアツのできたて。サラダにかかっているドレッシングもカナディアンがつくったとは思えないほどのおいしさ。失礼ですねすみません。
でもしょっぱいだけじゃなくてちゃんと美味しいドレッシングのかかったサラダはカナダのレストランに来て初めて食べた。なんだか新鮮だった(ダブルミーニング)。どうやって作っているのだろう。絶対醤油使ってると思うんだけど。まさかね。
あまりの美味しさにガッツいてしまってあっという間に完食。本当に美味しかったので精算のときキャミソール姿で働いている金髪お姉さんに本当に美味しかったと告げる。やっぱりイカれてる。それはよかったとお姉さん。フライヤーの油跳ねたらめっちゃ熱そうって思ったけどそれを伝える術は持ち合わせていない。何も問題なかった。
ホテルに一旦帰る。ダウンタウンまでの道を帰りは倍近くの時間をかけてゆったり歩いた。オーロラでは味わえない満足感の余韻にもう少し浸っていたかった。
オーロラビレッジ最終夜
オーロラの結果だけ先に書く。
観れた。バスを降りた瞬間に既に出現していたし、相変わらず美しかった。10時前くらいだったか、頭上ではなかったが動いているのも確認できた。毎日見てしまっていいのか。
今日も快晴。初日は1つ、昨日は3つの流れ星が見られたが今日は見れなかった。相変わらず月の輝きが強くて星座はそこまで多くない。空気には何の香りもない。ただただ冷たい。
3日通して振り返ると昨日の帰り際の発光が一番美しかった。出来ればあれをもっと長い間鑑賞していたかったがそれは贅沢かもしれない。今夜は最初の活動以降は尻すぼみで、そこにあるのがしっかり確認出来るものの動きまではつかないといった具合。
十分だ。十分すぎると自分に言い聞かせる。
なぜかというとメディアに露出しているオーロラの写真ほど派手でなかったからだ。昨日も書いた気がするけど思い描いていた理想像とギャップがあったのもまた事実。
雑誌やテレビに紹介されるオーロラや、額縁に入って飾られているようなオーロラというのは年に数回か数年に一回レベルのシロモノだ。写真家だってご飯を食べる為に商品価値の高い一枚を撮ってるわけだし当然。石田純一が靴下を履かないくらいナチュラルだ。
人間は欲深いのであんなに凄いのが見れるんじゃないかって気持ちがどこかにあったのだけど、あんなの宝くじに当たるようなものだ。私は紛れもなくイエローナイフに来て、実際にオーロラを目の当たりにし、氷点下40度を体験した。満足しないわけがなかった。
オーロラビレッジにはレストランがある。何でもケベック出身の腕利きのシェフが毎日名物料理を作っているそうだ。いくしかない。選択肢はない。最終日だし。ホワイトフィッシュは美味しかったけどそれはそれこれはこれ。
The Lodge at the Village (イエローナイフ) の口コミ・写真・地図 – トリップアドバイザー
北極イワナのチャウダー
美味しい。暖まる。
この左のパンは樹の枝みたいに枝分かれしてる。なんて名前だったか失念した。
クラムチャウダーとか本当に美味しいしたまに無性に食べたくなるのはなんなんだろう。
クリームブリュレは罪の味。
罪深い。キリストが真っ先に断罪したのは夜中に甘いものを食べることだったに違いない。
この料理をさらに美味しくしてくれたのが昨日も触れた若夫婦だった。一人でレストランにいたらあとから食事に来て、わざわざこちらのテーブルまで一緒に食べませんかと誘いに来てくれた。
旅は道連れ世は情けだ。昨日のヒゲもじゃのトニーのことはもう忘れた。
二人とも夕食は食べずにここに来たとのことだったがバッファローリブもホワイトフィッシュも大皿にこんもり積まれていて副菜もたっぷり。ヤサイアブラマシマシだった。
カナディアンを飲みながらお互いの境遇を話し合うのはとても気分がよかった。いい旅夢気分。ワーホリに来た理由が気になるらしかった。それもそうか、私自身来る前はワーホリに行く人がなんだかかっこ良く思えたし行くきっかけが知りたかった。
「仕事辞めてからまた普通に働くのが嫌だったんでー。それに一回は海外で生活してみたかったんです。」
「へえー、凄くいい経験ですよね。僕らはリゾート地にしか行ったことないですよ。カナダに住むなんてことと比べたらグアムなんて伊豆みたいなもんですよ。」
とか
「でも仕事を辞めずにずっと働いてる人の方が立派だしかっこいいですよ。」
「いやいや、僕らは安定にしがみついてるだけで外に一歩踏み出す勇気がないだけです。へえーよく海外に住もうって思いましたねー、すごいなあ。ハワイなんてあんなの伊豆みたいなもんですよ。」
どうやら彼は伊豆推しのようだった。
それにしても凄くヨイショしてくれた。海外で生活するなんて凄い、とてもいい経験だ、会社を辞めて海外に行くというその勇気が素晴らしい。
顔から仕草からいい人オーラがにじみ出ている。成城石井で買い物をすることが板についているタイプだ。よくわからない野菜も器用に調理するタイプだ。私に取ってのヤサイはモヤシ:キャベツが8:2のアレだというのに。
全然すごくはない。
ワーホリなんて来るだけなら別に凄くはない。ただ、海外での生活をエンジョイできたならそれは凄い。自分が生まれ育った土地以外で暮らすには才能と努力が必要だ。でもこれはどうやら水掛論で、無いものねだりの一種だ。
彼らはより良い一枚を求めて延長をすると言った。ホテルに帰る時間を有料で1時間半ほどずらせるシステムがあり、彼らは朝早くの便で帰るからどうせ寝れないしそのほうが都合がいい。
「お会いするのはこれで最後になるかもしれませんが遠くから応援しています」と言ってくれた彼らはやっぱりいい人たちだった。山口百恵もびっくりするほどいい日旅立ちだった。
そう言ってまた凍った湖の上を歩いて行く若夫婦。彼らはこの「苦行」をエンジョイしているらしかった。私ももちろんエンジョイ出来た。
オーロラは忘れられない経験をプレゼントしてくれた。帰りのバスの中で史上最も低温な3日間を振り返りながら自然と頬が緩むのを感じていた。